はじめに

 「歴史の研究」はイギリスの歴史家、アーノルド・トインビー氏の著作です。

原書の1~3部が初めて出版されたのは1934年なので、古いものは90年も経っています。
文明の興亡という観点から歴史を研究したもので、原本は12巻からなっているようです(私も見たことない!)
日本語完訳版は25巻に分けて出版されました。

単に歴史の事実を詳しく書いたのではなく、文字通り「研究」という言葉が相応しい内容になっています。
例えば目次には、文明の発生、文明の成長、文明の挫折、世界国家、西欧文明の前途 などが並びます。
その後、サマヴェル氏が2巻に分けた縮刷版を出版しました(日本語訳では3巻)

ところで、この「歴史の研究」の第七部「世界教会」(日本語完訳版第15巻)の中に、「神の参加なくして人類の統一はあり得ない」という大胆な主張があると聞いて探してみると、確かにありました。

サマヴェル氏の縮刷版(の日本語版)では、
「神の参加なくして人類の統一はあり得ない。この天上の水先案内を抜きにした場合、人間は単にかれの生得の社会性に反する不和におちいるばかりでなく・・・・悲劇的な難問題に苦しめられる。」2-p493
ここでは、神様が水先案内人にたとえられています。

トインビーさんは、宗教に対して理解が深い方ですが、歴史学者であり、宗教団体の教祖ではありません。
宗教団体の教祖ならば、このくらい言っても別に驚くことはないし、その主張が「当たるとも遠からず」くらいならば上々と見てこちらも妥協する用意があります。

しかし、トインビーさんは学者です。20世紀最大の歴史家と評する人もいます。
日本での人気も高かったとか・・・・こんな膨大な日本語完訳版が出版されるほど。
学者が言うからには、どこかにそれ相応の根拠がしっかり書かれているのだろう思い、調べてみたくなりました。

トインビーさんとしても、「神様を信じています」という程度では、ここまでの発言はしないでしょう・・・・もう少し身近に感じていなくては!
・・・・そうでなければ、彼は世界的、歴史的な大嘘つきになってしまいます。
本人自身がその体験から、神様のキキメ(!)を具体的に感じているはずです。


「歴史の研究」は、上記のような神様がらみの内容以外にも教訓的なことが多く、文明や国家だけでなく、一人の人間の生き方にも応用できる点が多くあります。
歴史上からその証拠が沢山拾われているのも、説得力があって魅力です(・・・・多すぎ?)

出版が完了するまでに30年もかかったとか。
大きくは三度にわたって出版され、その間には第二次世界大戦も経験しています。
トインビーさん自信の考え方にも変化があったようです。

実際に読んでみると(拾い読みですが)、独特な文章にも引かれました・・・・いわゆる名文というのとは別でしょうが。
親しみやすさも感じます。ここでも「トインビーさん」と呼ばせてもらうことにしました。

その後、別の書物で以下のような文章も見つけました。
「未来を生きる」p23 より
「宇宙を形造っているすべての事物の背後、そして、その彼方には・・・・これは私の信念ですが・・・・この宇宙に意味と価値を与えている何か究極的な存在といったものが存在しています。
そして、この究極的な存在、この人間の究極的な対象は多様ではなく、何か単一なものなのです。
この究極的な存在、この精神的存在こそ、私たちの愛を求めることのできるすべての権利の中で最高の権利を持っているというのが、いまや、私の信念です。
私たちが、その究極の存在を愛することができる限りにおいて、その存在は、私たちが特定の事物を愛するうえで何を優先させるべきかを決めるのを導いてくれます。
宇宙の背後にあるこの精神的な存在を私が信ずるということは、一つの信仰です。
この精神的な存在があるということの証明は、私にはできません。
・・・・(中略)・・・・
私は、ただ人間性の精神的な側面で私が直接経験したことから、その存在を感じ取るのです。
たいていの時代、たいていの場所で、たいていの人が、同じ感得をえてきました。」

ここでは国際政治学者の若泉敬氏がインタビューの形で質問し、トインビーさんが応えています。 

トインビーさんにも神様の存在証明はできないとのこと。
しかし、神様のことをある程度知っていて、自分以外の多くの人も同じ神様を知っている!
・・・・たぶん、神体験とか神霊体験とかいうような大げさなものではなく、もっと日常的なものとして。

余談ですが、こんなことを聞いたことがあります、
神様は見えなくていいのです。見えると、人間は欲が深いので奪い合いになって困る!

「歴史の研究」のほぼ全体を貫いている考え方は「挑戦と応戦」です。

適度な挑戦があったので文明が発生し、適度にいじめられたおかげで(?)高等宗教が発生しました。
このへんの挑戦といじめの・・・・何と言いますか?・・・・さじ加減(!)をコントロールしながら歴史を引っ張ってきたのが神様のようです。
しかし、人間にも自由意思、選択の自由があって、力関係は見えませんが、万能の神とも言えないようです。
神様のキキメが分かれば、良くない方向性も分かるし、処方箋も分かるかも知れません。

多少宗教に関心があるものの立場としては、完訳版15巻「世界教会」の辺りに一番惹かれましたので、その辺を中心に読み始めました。

「歴史の研究」は久々に関心をもった作品です。

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